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170人から10000人へ、たった3年で女子ラグビープレーヤーを60倍にした秘策とは!?

170人から10000人へ、たった3年で女子ラグビープレーヤーを60倍にした秘策とは!?

ウェールズラグビー協会は、なんとたった3年で170人だった女子プレーヤーを1万人へと60倍に増やしたという

どうやってウェールズはそれだけのプレーヤーを獲得したのだろうか?その原因について探っていこう。

まずはどれだけすごいことなのか、日本と比較してみよう

現在日本の女子プレーヤーの現状

平成28年度 チーム数・登録者数より概数

日本では現在女子プレーヤーは約4200人で前年比+630人と約18%増えている。

日本の女子プレイヤーの年齢別人口
日本の女子プレイヤーの年齢別人口

女子プレイヤーの約半数を女子が占めていて前年比+240人と増加傾向、中学生以降のプレイヤー人数は増えているのだろうが、小学生に比べると少ない。男子のラグビープレイヤー人口は高校生にピークを迎えるのと対照的な人口分布だ。この背景には中学生以降のラグビーの始めづらさ、受け皿のなさなどが関連しているのかもしれない。

女子ラグビー人口に関してみても世界トップレベルの国では1万人程度のプレーヤーがいるということを考えると、ここ数年の伸び方は素晴らしいが、ようやくトップレベルの国の半分に達したところでまだまだ発展途上といえるだろう。

数年前ウェールズは現在の日本の30分の1の女子人口だった。そこから数年で世界トップレベルまで増やしたということだ。そのとてつもなさが窺い知れる。

The Welsh Rugby Union pathway for girls rugby is launched with WRU head of rugby Josh Lewsey and deputy minister for sport Ken Skates AM at Ysgol Gyfun Glantaf, Cardiff
The Welsh Rugby Union pathway for girls rugby is launched with WRU head of rugby Josh Lewsey and deputy minister for sport Ken Skates AM at Ysgol Gyfun Glantaf, Cardiff
引用:https://www.walesonline.co.uk/sport/rugby/amateur-rugby/boost-womens-rugby-wales-successful-9670106

 

 

170人→10000人 ウェールズではなにをしたのか?

そのことを理解するにはまず、ウェールズラグビー協会が開始したスクールハブ制度とその管理を行うハブオフィサーという役割について理解しなくてはならない。

日本では聞きなれない、初めての言葉「スクールハブ制度」「ハブオフィサー」とは何なのだろうか?

スクールハブ制度、ハブオフィサーとは?

スクールハブ制度とはウェールズで、女子ラグビー普及開始の3-4年前から始まった制度。ご存知の方も多いと思うがハブというのは自転車の車輪の中心で、周囲から出ているスポークという針金を束ねる部分だ。

グラウンド内外での生徒の成長をラグビー関係者が中心となって促し、体育の授業や休み時間にタグラグビーの普及を行うなかでラグビーに興味をもった生徒を各学校から一か所に束ねるというハブ的な存在をしている。

Hub
422737 / Pixabay

 

その中心となる役割を果たすのがスクールハブのオフィサー、

ウェールズでは100か所以上の学校に常駐し、ラグビーの参加者を増やすだけでなく、リーダーシップやソーシャルスキルなど生徒のお手本として良い人を造るためのロールモデル的存在としてその効果が認められている。

具体的な例の一人としてハブオフィサーの一人Marc Breezeを見ていただこう。彼は元プロラグビー選手で現在はフルタイムのハブオフィサーとして働いている。

 

彼のようなハブオフィサーの仕事は体育の授業や昼休みや放課後などにタグラグビーやラグビースキルを教えることを通して人間教育を行う。そして学校や地域でラグビーリーダー学生レフェリーの育成も行う。

また新しい言葉がでてきたので説明しよう。

ラグビーリーダーとは、学生がタグラグビーなどを指導できる資格で、低学年の生徒にタグラグビーを指導することができる。さらにハブオフィサーのサポートのもとラグビーの指導もできる。また、学生レフェリーとは文字通り学生のレフェリーだ。学生のなかにレフェリーができる学生がいることで昼休みや体育など自発的にタグラグビーの運営ができる。昨年1年間で2000人のラグビーリーダーが誕生し、200人のLevel1のレフェリーが誕生した。

 

写真やSNSでみつけた具体例

なかなかイメージが湧きづらいので、写真などで見ていこう。

 

リーダーによるラグビー体験会

Rugby Leaders from Milford Haven School Club Hub delivering rugby skills to local primary school children
小学生たちにタグラグビーを教えるラグビーリーダーたちRugby Leaders from Milford Haven School Club Hub delivering rugby skills to local primary school children
参照:http://www.wru.co.uk/eng/club/38442.php#.WrNxCKjFJPZ

 

 

レフェリー資格取得の様子

 

ランチタイムの様子

 

学校の予定表にも(赤字は女の子限定の日)

 

学校での女子のタックル練習

出典:twitter.com Breezey_boy status
出典:twitter.com Breezey_boy status

 

ある地区ではラグビーリーダーが小学校で164回にもわたるタッチラグビーの練習会を行い600人の男子と350人の女子が定期的に参加した。さらにハブオフィサーのサポートの下、ラグビーリーダーが中心となり小学校でのタグやラグビーのフェスティバルを7回も開催した。

フェスティバルの様子

 

このようにしてハブオフィサーがラグビーリーダー、学生レフェリーを増やすことで試合数、チーム数、プレー習慣のある生徒の数が増加した。さらにフィールド外でも生徒にとってのお手本であるハブオフィサーが学内にいるということやラグビーを通じたメンタリティーを教わることが学生たちの普段の行動や学習態度にまで改善を促しているという報告がされている。

ハブオフィサーによる取り組みをウェールズラグビーユニオンとバーミンガム大学が共同研究したところ、ラグビーを選択した子は、ほかのスポーツを選択した子に比べてモラル、自信、自尊心が高められたとの結果が出た。

これらのスクールハブ制度やハブオフィサー制度により、生徒の成長はもとより、ラグビーに触れる機会の増加、プレーヤー人口の増加、それに伴う女子プレーヤーの増加がもたらされている。

 

しかしそれだけでは、爆発的な女子プレーヤーの増加は説明できない。ほかになにか原因があるのだろうか?

 

女子プレーヤーの爆発増加の要因

爆発的な増加の要因を端的にいうと

学校の内外でラグビーに触れる環境を増やしたことに加え、内外をつなぐ導線ができた事、そしてラグビーへの参入障壁が下がった事が要因だ。

さらにこれを説明する際に必要になる言葉として、クラスターというものが存在する。クラスターとはもともと、果物の房といった小さな塊を表す言葉だ。

今回説明するクラスターとは女子のみで構成されたラグビー集団をさす言葉だ。

詳しく説明していこう。

クラスター
stevepb / Pixabay

 

 

女子にとってのラグビーへの参入障壁をさげる

ラグビーをするまでの段階

ラグビーを始めるにあたってラグビーを知る→興味をもつ→体験する→チームに入るなどの段階を一般的に経ることになる。それぞれの段階をクリアして先の段階に進むのだが、先に進むことを阻む心理的な障壁というものが存在する。例をあげると

段階:障壁

ラグビーを知る、興味をもつ:そもそも興味を持つ機会がない、関心がない

体験する:わざわざ体験にいかない、体験に行き方がわからない、行くのがめんどくさい、ラグビーは危険

チームに入る:チームどこにあるか知らない、男子と一緒にやるのはこわい、仲間に女子がいない、まわりに女子でやっている人がいない

などが考えられる、それぞれの段階で障壁をクリアしなくてはラグビーまで至らない。具体的にはチームに入ろうと思っても、どこにチームがあるのかわからなければ、わざわざ近くにチームがあるのか調べて、そのチームに連絡して全く知らないひとと初対面でラグビーの練習に行くことになる。その数多くの障壁に対してそれぞれ解決策を用意しなくてはならない。

ウェールズでは、前述のスクールハブ制度により日常でラグビーに触れる機会を増やした。このことにより知る→興味を持つ→体験するを一気に解決している。
さらに体験で興味をもちもっとプレーしたいと思った女子をハブオフィサーがきちんと掬い上げ、クラスターという女子のみのラグビー集団へと導線を作った。
クラスターという女子のみのチームへ集められることで男子チームに女子が一人という状況にさせず、同じ女性の仲間たちとコミュニティを用意している。
チームでのプレーはコンタクトラグビーに固執せず、本人の意思に合わせたカテゴリの選択ができる。
 
 
このような方法により、ラグビーを知る→興味をもつ→体験する→チームに入るという障壁をすべてクリアした形となる。このようにしてウェールズは女子ラグビーを始めるためのシステムを作り上げた。
 
それぞれの段階をもう少し掘り下げよう。
 
 

学校でラグビーをすることで、全く知らない0のスポーツからちょっとは知ってる1のスポーツへ

人間だれしも、全く知らないものを始めることには大きな労力が伴う。なにごとも0から1にすることは大変なのだ。
学校で安全なタグラグビーなどを経験してもらうことで、人生の早い段階でラグビーをしたことないという立ち位置から、少しでもしたことがあるという立ち位置にしてしまう効果がある。一度でも経験したことのあるスポーツは、全くしたことのないスポーツに比べて何倍も始めやすいスポーツになる。
 
 
www.gtfm.co.uk
www.gtfm.co.uk
 
 

女子のみのチーム、クラスター

総プレイヤー1万人のうち3000人は、女子のみのチームであるクラスターセンターと呼ばれるチームに所属して習慣的にプレーしている。女子のみを集団化することで、仲間意識を高めることができコミュニティの持続可能性が高まる。周りに女子ラグビーをしている友人が少ないと相談もしづらかったり、孤独に感じてしまうこともあるだろう。始めやすくなると同時に離脱率も下げている可能性もある。

クラスタの例:http://jestersclustercentre.rfc.wales/ https://www.facebook.com/RugbyJesters/

 

コンタクトにこだわらないことでコンタクトラグビー人口が増える

ラグビーをさせようと考えるあまりコンタクトへの移行を進めるのではなく、15人制7人制といったゴールを設けずに個人が興味があってやりたいと思うものをさせる。年齢など関係なくコンタクトのないタグやタッチなどを選ぶのであればその選択を推奨するという姿勢が大事だ。

日本ではついつい、コンタクトありのラグビーを中心に考えすぎていないだろうか?

年齢もカテゴリも分けずに一か所に集めプレーすることで多くの人数が集まり、選手同士の交流がさらに進む。

コンタクトを意識させないことで入口が広がり、競技人口が増えることで将来的にコンタクトラグビーの人口も増えるのだ。

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Gowerton-Hawks-cluster
出典:http://www.gtfm.co.uk/more-girls-playing-rugby/

 

 

一連の育成システム

ウェールズでは、いままで9歳から15歳の女子ラグビープレイヤーがほとんどいなかったが、今回のプレイヤー増でシニアへと続くキャリアパスが形成された。

シニア世代から突然始めることは難しかったが、ジュニアから始めることでプレーヤー数が爆発的に伸びたとともに今後も安定的なプレーヤー増加へと繋がる。

女子ラグビー選手のためにサマーリーグの導入も進み定期的に試合ができることにより、さらなる好転が続いているようだ。

 

女子だけのラグビークラスター(団体)

 

日本ではどうすればよいのか?

ウェールズのような制度日本では難しい、そうあきらめてしまうことはもったいない。今回のウェールズのスクールハブへの取り組みや女子ラグビーの取り組みをみて、どの部分が利用可能かを考えよう。

整理しなおすと、女子ラグビーの取り組みの肝とはスクールハブ制度のおかげで小学校でタグラグビーをするという最初の参入障壁を取り去った事とスクールハブから掬い上げた女子生徒をすぐさま女子だけのチームに入れることにある。また、女子だけのチームができるのもスクールハブ制度で多くの女子を連れてこられるからだ。

つまりスクールハブ制度の上に成り立っている制度といえる。スクールハブ制度導入は日本では一見導入不可能に見えるが、どうだろうか?

 

教員の働き方改革

じつは今ラグビーにとってピンチとチャンスが訪れている。

昨今問題となっている部活動に関わる教員の働き方の改善、いわゆる教員の働き方改革の一環で、もしかすると部活動や課外活動という機能が外部化する可能性がある。

https://mainichi.jp/articles/20180121/ddm/003/100/102000c

ラグビーにとって現時点ではピンチにみえる。なぜならラグビー強豪校以外では高校にたまたまラグビー部があり、先輩や先生に口説かれ入部するという形が少なくない。多くのマイナースポーツにとって部活動の外部化がおきると競技者数が減る可能性がある。教員の働き方改革は教員が人間である以上、いやがおうなく進むものであり、避けられない、ここ1,2年で大きく流れが変わるだろう。このタイミングをチャンスと考え、いち早くこの改革に対応するスポーツは生き残れるはずである。

今回のウェールズの方法を取り入れることがその対応策の一つだ。いち早く教員の働き方改革に協力し、部活動の外部化の一環として、ハブオフィサーやラグビーリーダーのような存在が体育の授業や昼休み、放課後などでタグラグビーの指導を協力し、ウェールズのような導線を確保することが考えられる。

必ずしもウェールズのようにフルタイムで最初からやる必要はないので、ラグビーリーダーはラグビー経験者の大学生や地元の元プロ選手などが適しているかもしれない。このようにして日本版スクールハブやハブオフィサーを作り上げることが可能だ。

さらに、現在のラグビープレーヤーの大部分をラグビーリーダーや学生レフェリーの教育をして資格を与えてしまうことはもっと簡単に可能で、学生の責任感の向上、ラグビーの普及に役立つことは明らかだ。

これらの日本版スクールハブ制度、ハブオフィサーと同時に、女子のみのチームであるクラスターが動き出すことができる。日本では女子プレーヤーは距離の離れた環境に点在しがちだが、スクールハブを通じて、興味のある女子選手を多く集めることができれば、その現状も打破できる力をもつ。集団になってしまえばその楽しそうな姿を見て人数がさらに増えていくという好環境も生み出せるであろう。

このピンチに素早く動き出すことでチャンスへと変えることができる。

 

結論

すぐにできることは、タグラグビーなどの安全でだれでもできるスポーツを広げることでラグビーへの入り口を広げる。学生のラグビーリーダーやレフェリーを増やす。中期的にはハブオフィサーを作りタグラグビーに興味を持った子を一か所に集めることのできるシステムを作る。

 

このように日本でもまねして取り入れることは可能なシステムに思えるので、教員の働き改革というピンチを利用してチャンスに変えぜひ推進していきたい。

今後のウェールズのさらなる動きにも注目だ!!

参考資料の原文はこちら

https://www.walesonline.co.uk/sport/rugby/amateur-rugby/boost-womens-rugby-wales-successful-9670106

http://www.wru.co.uk/eng/news/35315.php#.WrH3kKjFJPY

http://www.gtfm.co.uk/more-girls-playing-rugby/

http://www.wru.co.uk/eng/club/38442.php#.WrG-x6jFJPY

 

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